【逮捕までの基本的な流れ】
容疑者を逮捕する際、警察は逮捕決行の前日に、容疑者宅の近くで張り込みをします。
そして、確実にターゲットが自宅にいることを確認した上で、翌日の早朝に突入するパターンが一般的です。
家がアパートやマンションなどの賃貸物件であれば、居留守を使ったとしても大家から合鍵をもらって強制的に入ってきます。また、居留守をしすぎると、場合によっては窓を割ったりして入ってきます。
逮捕の日の朝
「ピンポーン、ピンポーン」
12月7日、午前6時。
インターホンの音で目が覚めた。
共犯が既に何人も逮捕されていたため、この日が来ることはわかっていた。
けれど、予想していたよりも早かったことと、心のどこかで「何だかんだ来ないんじゃないか?」という楽観的な部分もあったため、この時は若干ショックだった。
インターホンがひたすら鳴っている中、とりあえずタバコに火をつける。
「ふぅ~。」
(どうしよっかな・・・)
携帯を開いた。
着信数十件。全部知らない番号。おそらく刑事の携帯だろうと思い、それは放っておいた。
友人との危ないメールがないか一通りチェック。
基本的に用事が済んだら危ないメールはすぐに削除していたので、大丈夫だった。
また、薬物関係の最中の写真など、携帯内のデータを根こそぎチェックした。バレたらまずい物は全て削除し、友人に電話をした。
友「もしもし。」
俺「なんしょん?」
「寝ようた。」
「ほんまー。ごめんな。てか刑事来たわ。」
「本間よん?!だりぃな。刑事、外おるん?」
「うん。」
「マジかー。まぁ了解じゃわー。頑張りや。」
「はーい。てかボングの件、タカ君に伝えといてなー。」
「おう、了解。てかピンポンうるさいな(笑)」
「じゃろー。朝っぱらからめっちゃうるさいけぇな(笑)」
「強行突破される前に出ときやー。」
「もうすぐ出るよー。まぁまた出てきたら連絡するわ。」
「りょーかーい。気付けてなー。何を気付けるんか知らんけど(笑)」
「はいよー(笑)じゃーなー。」
「ほーい。」
と、他愛のない話をしたり、大事な用事を頼んだりと、何人かの友人に電話をした。
そして、刑事にバレたらまずい物が家にあったため、トイレの中に放り込んだ。流す音で起きてることがバレたらめんどくさいため、流すのは外に出る直前にした。
逮捕後はタバコが吸えないため、一通りの用事を済ませた後は、またタバコに火をつけた。その間も、部屋の中に変なものが無いか最終チェック。
警察が来た時のことを考えて大体の物は一カ所に揃えていたため、大丈夫だった。
(よし、出るか・・・。)
任意同行
刑事は、相変わらずピンポン鳴らしまくりで
「〇〇くーん。」
と名前まで呼んでいる。近所迷惑きわまりない。
用事を済ませた俺は、外に出た。
刑事が4人ぐらいいた。
「おー。偉い遅かったのー。でもよう出てきたの。何で来たかわかっとるのー?」
「さあ。わからんすね。」
「まぁとりあえず署まで来てもらおーか。その恰好じゃ寒いぞ。上着もってきとけ。」
「はぁ。」
と言って上着を取りに戻り、また外に出た。
駐車場まで下りるとハイエースが止まってあり、それに乗り込んだ。
そして、警察署へ向かった。
警察署へ到着
警察署に到着し、建物の裏の駐車場に車が止められた。車から降りて数メートルのところに容疑者の出入り用の出入口がある。車から降りて、その出入口から警察署内に入った。
警察署へは何度か来たことがあるけれど、数年ぶりだった。階段を上り、まずは2階の取調室へと連れて行かれる。椅子に座るよう促され、椅子に座った。
同じく、俺を迎えに来た時に喋っていた担当の刑事が机を挟んだ向かい側に座った。
刑事の尋問
「どうだ?まだわからんか?」
「わからんすね。」
「わからんじゃなかろう。自供しといた方が自分のためだぞ。」
共犯が自供していることを確実に確認できるまでは、自分から自供する気は全くなかった。
「わからんすね。別に俺から話すことは何一つないっす。」
「話すことはいっぱいあるだろうが。」
「ないっす。」
「ふぅ~・・・。喋らんのか?」
「何を喋ってほしいんすか?なんべんも言わせんでください。こっちから話すことはなんもないっすから。」
「お前は市橋か(笑)話すことはいっぱいあるだろーが。」
「いや、ないっす。」
「なかったらここに連れてきてないわ。」
「・・・」
「はよう話せい。」
「・・・」
「喋れんのか?」
「喋ることは何一つ無い言うとるでしょーが。聞きたいことがあるんならそっちから聞いてこいや。」
「ワシはお前の口から聞きたいんじゃ。」
「話にならんっすね。」
「話にならんのはこっちのセリフじゃ。」(ごもっとも)
「・・・」
と、ここからはひたすら黙っていた。向こうはひたすら喋りかけてくる。色んな刑事が交代しながら・・・。が、俺は放置し続けた。
初めての逮捕
ずっと黙っていると、最終的には刑事が逮捕状を出してきた。
逮捕状が出てしまうと、仮に冤罪だったとしても、必ず逮捕される。
もうどうしようもない状態。
「もうええわ。ほれ、逮捕状じゃ。〇月〇日、〇〇で〇〇をした件、これで逮捕するけぇの。覚えとろうが?〇〇達と一緒にしとるよの?」
「・・・」
「ええ加減にせぇよ。〇〇も〇〇も全部喋っとるぞ。事件のあと〇〇に行ったんだろうが?〇〇が、絶対に口割らんゆう約束したけぇ、お前は絶対口割らんだろうって心配しとったぞ。」
刑事は共犯から聞いたであろうことを色々と話してきた。
ここで、共犯が口を割っていないと絶対に刑事が知っているはずのないことを言ってきたため、とりあえず俺は安心した。
「はい、やりました。」
と、俺は言った。
俺が逮捕された時点で、共犯が口を割っていることは間違いなかったが、それでも100%の保証がない以上自分から口を割る訳にはいかなかった。非行少年によくあるクソみたいな無駄なプライド。
逮捕状を全て読み上げられた。
国選弁護人を無料でつけることができるということや、私選弁護人を呼ぶことができるといった説明を受けたり、書類に署名や拇印を押したりされた。
この時点で、携帯の電源を切るよう指示され、持ち物すべてを出すように言われた。
と言っても携帯以外は何も持っていなかったため、携帯だけを差し出した。
俺が非行内容を認めたため、そのまま少しのあいだ取り調べをされた。
そして、朝早く逮捕されたにも関わらず、もう昼が近くなってきていた。
昼食
昼の時間になったためか、刑事が弁当を持ってきた。
「ほら、昼飯じゃ。」
刑事が机に弁当を置いた。
俺は弁当を手に取り食べ始めたが、状況が状況だけにあまり食は進まなかった。
上手そうなものだけ食べて、半分近くは残した。
13時過ぎころになった。
「今日はもうええけぇ、中に入ってよう考えとけ。」
「はい」
これが俺の初めての逮捕となった。ここで初めて、手錠をつけられた。
手錠は黒色、さらに手錠からはロープがつながっていて、そのロープを腰に巻かれる。
まさに首輪をつけられたペットのような感じで、取調室を後にした。
全身の写真撮影や指紋の採取など
ここから留置場へ入れられるが、その前に全身の写真撮影や指紋の採取などされる。
まず身体検査室のようなところへ連れていかれ、床に張られた足形のマークに両足を合わせた状態で様々な角度から写真を撮影された。中々本格的な写真撮影で、体の後ろには白い反射板のようなものまであった。
写真撮影が終わると今度は別室へ連れていかれて、指紋の採取。
机に透明の板がはられていて、その下から赤外線のようなレーザーで採取する仕組みだった。
透明版の上に手を乗せ、手のひら全体の指紋をしっかりとられる。
指1本1本を1回ずつ採取していかなければならないし、指の側面や手のひらの側面なども採取されるため、かなりの回数採取される。
(なるほど…こりゃ手袋とかで指紋対策してない犯罪者はすぐ捕まるわけだ)
撮られた指紋はデジタルデータとしてバッチリ採取され、パソコン上でそれを確認する。
全て綺麗に採取できていることを確認し、作業は終わった。
そして、留置場へと連れて行かれた。
No.2:逮捕後の流れに続く