はじめに
まずはじめに、強盗致傷・強盗傷害(正式には強盗傷人という)・強盗致死・強盗殺人は、全て「強盗致死傷罪」の内に入ります。
強盗致傷罪は刑法で以下のように定められています。
「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。」
つまり、強盗行為により人を負傷させた場合(強盗致傷・強盗傷害)は無期または6年以上の懲役となり、強盗行為により人を死亡させた場合(強盗致死・強盗殺人)は死刑または無期懲役となるのです。
それでは、それぞれの違いと構成要件を解説していきたいと思います。
※私は弁護士など法律の専門家ではないため、内容に誤りがある可能性もあります。確実な情報をお求めの場合は専門家にご相談いただくことをオススメします。
強盗致傷と強盗傷害の違いと構成要件
強盗致傷とは、強盗犯が、被害者の財物を強取(ごうしゅ)する機会において、過失などにより相手を傷つけてしまうこと。つまり「傷害の故意が無い」場合を指します。
強盗傷害(強盗傷人)とは、強盗犯が、被害者の財物を強取するために、故意で傷害を負わせることを指します。最初から「奪うために殴る」ことを意味します。
強盗致傷は過失などによる結果的加重犯、強盗傷害は故意犯、と言えます。
実際に検察から起訴される際には、ほとんどが強盗致傷として扱われることが多い印象を受けます。どちらの罪名で扱われても、量刑判断において影響はあまりありません。
強盗致傷罪の例
・刃物を使用し、被害者を脅して現金を奪った際、被害者は抵抗して刃物を握ったために手を負傷。(強盗犯による直接加害では無いが、強盗の機会において発生した負傷のため、強盗致傷となる)
・窃盗犯が被害者のバッグをひったくろうとしたが、被害者はバッグから手を離さず抵抗。無理やりバッグを引っ張ったら被害者は転倒して負傷。(被害者が抵抗せずバッグを離していれば窃盗罪)
・強盗犯が被害者から現金を脅し取り逃走(この時点で暴行行為はしていない)。すると被害者が追いかけてきたため、立ち止まり被害者に暴行を加え、追ってこれないように傷害を負わせた。(被害者が追いかけてきていなければ強盗罪だった)
強盗傷害罪(強盗傷人罪)の例
・街を歩いている被害者にいきなり殴りかかり傷害を負わせた上、財布を奪う。
・被害者に包丁を突きつけて現金を脅し取ろうとしたが、相手が素直に応じなかったため、包丁で体を切りつけた上で現金を奪う。
強盗致死と強盗殺人の違いと構成要件
強盗致死とは、強盗犯が、被害者の財物を強取する機会において、過失などにより相手を死なせてしまうこと。つまり「殺意が無い」場合を指します。
強盗殺人とは、強盗犯が、被害者の財物を強取する機会において、殺意を持って殺害することを指します。「強盗の手段としての殺人」ではなくとも、強盗の機会に人を「殺意を持って殺害する」ことで強盗殺人が適用されます。
強盗致死は過失などによる結果的加重犯、強盗殺人は故意犯、と言えます。
強盗致死も強盗殺人も法定刑は同じ「死刑または無期懲役」となりますが、どちらの罪名で扱われるかで、量刑判断において少なからず影響を受けます。
強盗致死罪の例
・被害者に包丁を突きつけ現金を脅し取ろうとしたところ、被害者が抵抗し掴みかかってきて共に転倒。包丁が被害者に刺さってしまい死亡。
・窃盗犯が被害者のカバンをひったくった際、被害者が転倒して頭を強く打ち死亡。(被害者が転倒や死傷などしなければ窃盗罪)
・集団リンチを加えた上で財布などを強取。被害者をその場に置き去りにして逃亡したが、被害者はその後死亡。(死亡していなければ強盗傷人罪)
強盗殺人罪の例
・民家に押し入り、被害者を刺し殺して現金を奪う。
・刃物を突きつけ現金を脅し取った後、顔を見られてしまったことに不安感を抱き、殺すことを決意。被害者を刺し殺した。